MHK特番
商人と付喪神のたのしいクッキング
レシピ参考:今日の料理 新じゃがのそぼろ煮
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「今日の料理一品目、新じゃがのそぼろ煮です。」
「新じゃがは挽き肉と一緒に食べたいの!美味いと料理の書で見たぞ。」
「…へー。」
「挽き肉は箸でつまめないから、とろみにからめて一緒に食うと。煮汁も一緒に食せるから一石二鳥じゃな。」
「えんどう豆そのままでも美味しそう」
遠い目の商人。現実逃避でもしているのか。
「甘くて薄いえんどうらしいぞ。茹でたもの食うか?はい、あーn……」
「さっさと新じゃがの皮をむきましょうか。」
「……。」
付喪神ちょっとしょんぼり。しかしすぐに気を取り直す。
「ええと、皮をこう…あ、これが芽というやつか。落としてと。包丁だけで剥けるのができる妻の条件らしいので頑張るぞ。」
「わー、食べれるところまで落として勿体ない。下手なんだからピーラー使えですよ。食材はタダじゃねえんだぞ。」
「包丁を!使いたいんじゃ!お主に本体(※フォールスが憑いてる武器)を取り上げられておるから、他の武具も使えるようにならんと駄目じゃと思うて。これはその練習の一環でもあるのじゃ。料理などという細かい作業が出来れば、刃物も使いこなせると……。」
「僕がいうのもなんだけど、武器の付喪神のプライドとかないの。」
「プライドなんかでお主を守れんじゃろ。」
「なんでそこは冷静なんだ。」
「うむ。皮は剥けたぞ。じゃがいもは水にもぐらせて…。しばらく経ってから切っていくぞ。ここはざっくりで良いのか。」
「…もしかして半分に切ったつもり?どう足掻いても等分になってない。嘘だろ。」
「生き物を殴る感覚とはまた違うなあ。切るのも楽しいかもしれん。
ん、これはちょっと大きいから他のものよりも多めに等分するぞ。」
「等分の意味、辞書で調べてきなよ。」
「煮ればいずれ柔らかくなると書いておるし、多少大きさに差があっても大丈夫じゃろ!ほれ、"煮崩れ、欠け、ちょっと固めのもの、皆OKです"ともある。」
「僕が知ってる多少と違う。」
「じゃがいもは水の中にいれて。挽き肉も投入、と。」
「挽き肉は100g。僕が計ったので安心。」
「肉は美味いし多いくらいがいいじゃろ!」
せっかく商人が計ってたのに、どばどば追加していく付喪神。商人の冷たい視線には気がつかない。
「よし、このまま火にかけていくぞ!
これ面白いのう!ここを回すと火がつくとは。鍛冶屋の炎もこれだと楽かもしれんな。とと様…儂の作り手も年々鍛冶場に立つのがしんどくなってきたとぼやいておったし。」
「コンロ感覚の鍛冶屋の炎て。」
「便利なのは悪いことじゃないじゃろう。人の生活を便利に、豊かにするためにあらゆる道具は生まれてきたのじゃ。生きることは生活すること。人の歴史と共に歩んできた道具の進化は止まることを知らんな。」
コンロのつまみを勢いよく強に回す付喪神。
「あーっ!火!強い!焦げる!シングルタスクは火を使うときに喋るんじゃない!もー、話の長い年寄りはよ。」
「あの、リズクの方が儂より年上じゃからな。見た目は儂の方が年長者のように見えるが。」
「童顔で低身長だと言いましたか?」
「言ってない。どうした、幻聴か。いつにもまして、なんでそんなに怒っとるんじゃ…。ほらかわいい顔が台無しぞ。」
付喪神の顔面にフライパンを叩きつける商人。
~以下略~
「色々とハプニングもあったが、無事完成じゃ~!」
どこかから聴こえてくる音楽と共に、皿に盛り付けられた料理がドアップで映し出される。
「はじめて食える料理が作れたのではないか?良い匂いもするし!」
「肉でじゃがいもが隠れてる…。火は、通ってそうだけど。」
「そんなに褒められたら、流石の儂も恥ずかしいぞ。」
「褒めてない。」
「さあ、お待ちかねの実食タイムじゃ!まだ熱いので、ふうふうして…あーん、じゃぞ♡」
「刺すな、食べ物を。箸使えないならその辺にあるフォークでも使えば。」
「あーんは?」
「しない。」
「…味は?」
「濃い。」
「花嫁修行皆伝への道はまだまだ遠いな……。」
終わり
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来週のこの時間は「付喪神からのストーカー届けはどこに提出するべきなのか」という議題に関して話し合う討論番組が放送されます。