しろのあいさつ

 

僕はずっと見ているだけだった。

 

でも、それっておかしくないかい?

エルフ達が大陸にくる前…いや、はじまりの竜が卵だった頃から僕はここにいる。それなのにこの世界の営みには参加出来ない。

そんなの、不公平じゃないか。

 

ああ、僕だって君たちと同じように生活したい。君は想像したことがあるかい?僕は寝たこともないし、食事をすることも、土を踏んで歩くことも、息をすることも出来ないんだ。

 

だからね、ある時僕は試してみたんだ。出来るまで何度も挑戦したよ。幸運なことに、時間だけは沢山あるからね。

そしてやっと、声を届けることに成功した。

 

はじめて話しかけたのは黒い竜さ。今までずっと慕われていたのに、たった一度の失敗で人々から敵視されるようになった、あの竜だよ。かわいそうだったから、元気付けてあげようと思って。

 

その次は誰だったかなあ…。エルフの彼だったかな、それともドワーフの彼女だったかな。大切な少女を失った彼とも話したなあ。腕の印を気にする少年にも。生きている人形とも話したよ。ふふ、お話しするのって、楽しいよね。

 

あ、そうそう!それとね、話しかけることだけじゃなく、僕は自分の身体を手に入れたんだ。

とはいっても、君たちの身体とは違って中身はない。それでもこれは大きなことさ!君たちの言う、゙目を見て話ずが出来るようになったんだ。ほら、仕草もあるよ?表情もある。

ただ、まだ触ったり食べたり出来ないから、そこは今後の課題かなあ。

 

こんなに話をしてくれたのは君がはじめてだ。

こういうのを何て言うんだっけ…。うん、それだよそれ!仲良しってやつ!

仲良しの君にだけ特別に、僕の知っている話を少しだけ教えてあげる。

 

ほら、座って。飲み物も持っておいで。長い話だからね。